バルバラ ボビノ座の「私のもっとも美しい愛の物語」
2026年7月26日
また、カセットだ。
1966年12月、パリのボビノ劇場で録音された、バルバラ初の本格的ライブ・アルバム。1967年に発売された。まだ「黒いワシ」も「ペルランパンパン」も生まれる前の、バルバラの若い息づかいが、カセットの音からでも伝わってくる。
⸻
書斎には、自分で録音したカセットが何本もある。
バルバラの『オランピア・ライブ』と『私のシャンソン』。
他にも、ピアソラ、ジョルジ・ベン、イ・ムジチの『四季』、マレーネ・ディートリッヒ、フェラ・クティ、B.B.キング、デティ・クルニア……。
まだ全部は聴き返せていない。
ふと思った。
「そういえば、寝室にも何本か置いてあったな。」
二階のベッドの横に、小さなサイドデスクがある。本が山積みになっている。その横にカセットが何本か置いてあったはずだ。
確かめてみた。
すると三本ともバルバラだった。
『マダム』。
『黒いワシ』。
そして『ボビノ座のバルバラ』。
思わず笑ってしまった。
なぜ、この三本だけが枕元に置かれていたのだろう。
自分で自分がわからない。
でも、どこかでまた聴く日が来ることを、昔の僕は知っていたのかもしれない。
『ボビノ座のバルバラ』は1967年のライブ。
『オランピア・ライブ』より十年以上若いバルバラの声がそこにはある。
曲目を眺めるだけでも、その頃の彼女の心が伝わってくる。
「死ぬほどに死を想う」。
「生きることの苦しみ」。
「孤独」。
感情を隠そうとはしない。
そして八曲目。
「Ma plus belle histoire d’amour(私のもっとも美しい愛の物語)」
最初は恋の歌だと思っていた。
でも違った。
歌の最後で、バルバラは客席に向かって語りかける。
「私のもっとも美しい愛の物語。それは、あなたたち。」
その「あなたたち」とは、恋人ではない。
彼女の歌を聴きに来た人たち。
だから、観衆の熱狂にも納得がいく。
あの観衆の拍手。
それに応えるバルバラ。
そこには、歌手と観客という関係を超えたものがあった。
「私のもっとも美しい愛の物語」が、なぜあれほど多くの人の心を動かしたのか。
それがようやくやっと少しわかってきた。





POST YOUR COMMENTS
コメントを投稿するにはログインしてください。