ラジャスタンのカセット
2026年6月3日今朝もクラシック音楽からスタートした。そこからフラメンコとチルアウトが混ざったようなCDをかけ、気がつけばずっとワールドミュージックばかり聴いている。
音楽というのは不思議なもので、一枚が次の一枚を呼ぶ。
スペインから中東へ。
中東からアフリカへ。
そして、今度はインドだ。
棚を眺めていたら、こんなものが出てきた。
『RAJASTHANI FOLK TUNES ON BEEN』
ラジャスタンの民俗音楽を収めたインドのカセットテープである。
これこれ。
こういうのを見ると、つい手が止まってしまう。
『RAJASTHANI FOLK TUNES ON BEEN』
ラジャスタンの民俗音楽。
インドで買ったカセットだ。
たぶん三十年以上前になる。
初めてインドへ行ったとき、僕はデリーで騙された。
空港から市内へ向かうはずが、なぜか旅行代理店へ連れて行かれ、危うく高額なツアーを契約させられそうになった。
今では笑い話だが。
人生初のインド。洗礼を受けたのだ。
何もかもが日本と違った。
色も匂いも、人の距離感も。
このカセットは、その頃どこかで買ったものだ。
ジャケットにはターバンを巻いた男たちが写っている。
録音も決して良くない。
演奏も洗練されているとは言い難い。
けれど再生ボタンを押せば、一瞬であの頃のインドへ戻れる。
音楽というより、記憶の装置だ。
メルカリで売ろうかとも思った。
でも、値段を付けるのが難しい。
冗談で十万円にしようかと思った。
誰も買わないだろう。
いや、売れてしまったら少し困る。
こういうものは、音源としての価値より、自分の人生の一部だからだ。
旅をしていると、気がつけば色々なものが増えていく。
そして、こんなカセットテープ。
本当に大切なのはモノそのものではなく、その向こう側にある時間なのかもしれない。
ジャイプールの乾いた空気。
騙されたばかりのそう若くもない自分。
そして、何も知らなかった頃のインド。
一本のカセットから、そんなことを思い出していた朝だった。
いつか、またインドに行ったら、カセットを買ってこようと思っている。



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