World Music|世界の音楽とことばのアーカイブ

アフリカ、インド、中東、南米、東欧、バリ、ジャズ、民謡、スーフィー、クラシックまで。 蒐集・試聴・旅・記録を通じて世界の音楽文化を紹介する日本語のワールドミュージック・メディア。

Monday, 19/1/2026 | 10:02 UTC+9

African Odyssey — ブリュッセルの冬に生まれたジャンベの記憶

世界の音を追いかけていたあの頃、
僕は初めて“レーベルとしての責任”と向き合うことになった。
その最初の作品が、この African Odyssey だ。

場所はブリュッセル。
冬の空気が少しきつくて、
スタジオに入るたびに鼻の奥がツンとしたのを覚えている。
あの寒さの中で、
ジャンベだけが不思議なほど温かく響いていた。

このアルバムは、
ママディ・ケイタが亡命した街で、
彼のグループ “Sewa Kan” のメンバーを中心に録音したもの。
ただし、ママディ本人は参加していない。
それでも、彼らの演奏には
あの時代のアフリカの“鼓動そのもの”があった。

録音中、僕は風邪をひいてしまい、
本来ならやるはずのディレクションを
ほとんど出来なかった。
ジャケットデザインではメンバーと衝突し、
曲目も削り、
タイトルも後から “African Odyssey” に変えた。
いろんな後悔が積み上がった作品でもある。

でも、
この作品がなければ、僕はレーベルとして再起できなかった。

そして Ntoman。

数年後、
彼はアフリカに帰省中にマラリアで亡くなった。
その知らせを聞いたとき、
「アフリカの人がマラリアで亡くなるのか…?」
と思った自分の無知が恥ずかしかった。

ジャケットの中の彼の横顔は、
今でもまっすぐ音の方向を向いている。
ショーマンではなかったかもしれないけれど、
ジャンベに向き合うその姿勢は
本当に美しかった。

この作品は、
僕の“旅の始まり”であり、
“失敗と再生のスタートライン”だった。

About

世界の音楽との「出会い」(自己紹介 noteへのリンク) 大阪のレコード店で出会ったインドネシアのダンスミュージック ダンドゥット(DANGDUT)の女王、エルフィ・スカエシ(Elvy Sukaesih)と言ってもまずは誰もわからないだろう。インドネシアの美空ひばりと言ってもピンとこないな、きっと。それに正しくもない。インドネシアは多様な民族の集まる国だから国民を代表する歌手はいない。ひとつの大衆音楽の女王である。 大袈裟だが、このレコードと出会わなかったら、自分の人生は変わっていただろうと思う。ただ、それはわからない。でも、出会うべくして出会ったのだろう。 https://note.com/jirorhythm/n/n936acb145d0e

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