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Monday, 19/1/2026 | 10:02 UTC+9

バイーア —— 身体から生まれるブラジル音楽

ラテンアメリカの音楽

カポエイラとビリンバウ、サルバドールという土地

ブラジル音楽を語るとき、
**バイーア(Bahia)**という土地は特別な意味を持つ。

ブラジル北東部に位置するバイーア州。
その中心都市サルバドールは、かつてブラジルの首都であり、
アフリカから連れてこられた人々が最初に降り立った港でもあった。

この土地で育まれた音楽は、
旋律よりも先に、身体とリズムがある。


カポエイラとビリンバウ

音楽が身体を導く文化

バイーアを象徴する文化のひとつが、カポエイラである。

踊りのようであり、武術でもあり、
遊びであり、儀礼でもあるこの独特の身体表現は、
音楽と切り離して考えることができない。

その中心にある楽器が、一本弦のビリンバウだ。

ビリンバウは、
旋律を奏でる楽器というよりも、
場の緊張感や流れを支配するための音を鳴らす。

わずかな音の変化で、
カポエイラの動きが変わり、
場の空気が一変する。

ここでは、
音楽が身体を導き、
身体が音楽を完成させる。


サルバドールという都市

歴史と祝祭が交差する場所

サルバドールは、
ブラジルがポルトガル植民地だった時代の首都であり、
宗教、音楽、踊りが密接に結びついた都市として発展してきた。

アフリカ由来の信仰やリズムは、
抑圧の歴史の中で形を変えながら、
生活と祝祭の中に深く根を下ろしていった。

サルバドールのカルナバルは、
リオの華やかなショー型のものとは異なる。

街全体が音に包まれ、
人々が音楽の中に入り込んでいく。
音楽は背景ではなく、生活そのものとして鳴り続ける。


『大地の響』に収められたバイーアの音

こうしたバイーアの音楽文化は、
CD **『大地の響』**にも収録されている。

カポエイラやビリンバウの音は、
一般的な「鑑賞用音楽」とは異なるかもしれない。

しかしそれは、
土地の記憶であり、
身体に刻まれたリズムであり、
ブラジル音楽の根源に触れるための重要な入口でもある。


音楽を「聴く」のではなく、「立つ」

バイーアの音楽を聴くことは、
一曲を楽しむこと以上に、
ひとつの土地と向き合うことに近い。

音楽はどこから生まれ、
どのように身体を動かしてきたのか。

バイーアの音楽は、
その問いを、今も静かに、しかし力強く投げかけている。


出典・参考

ラテンアメリカの音楽

本稿は、1970年代に刊行された冬樹社の書籍に掲載された
ブラジル音楽家へのインタビュー内容を参考にし、
worldmusic.co.jp 編集部の視点で再構成・要約したものです。

About

世界の音楽との「出会い」(自己紹介 noteへのリンク) 大阪のレコード店で出会ったインドネシアのダンスミュージック ダンドゥット(DANGDUT)の女王、エルフィ・スカエシ(Elvy Sukaesih)と言ってもまずは誰もわからないだろう。インドネシアの美空ひばりと言ってもピンとこないな、きっと。それに正しくもない。インドネシアは多様な民族の集まる国だから国民を代表する歌手はいない。ひとつの大衆音楽の女王である。 大袈裟だが、このレコードと出会わなかったら、自分の人生は変わっていただろうと思う。ただ、それはわからない。でも、出会うべくして出会ったのだろう。 https://note.com/jirorhythm/n/n936acb145d0e

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