World Music|世界の音楽とことばのアーカイブ

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Monday, 19/1/2026 | 8:45 UTC+9

ブラームス

交響曲 第3番 ヘ長調 作品90

ブラームスの4つの交響曲の中で、
もっとも人間的で、親密な響きを持つのが、この第3番です。

1870年代後半から80年代にかけて、
彼はウィーンを拠点にしながらも、
イタリアを何度も旅し、
北と南、ドイツと地中海のあいだで音楽を熟成させていきました。

この交響曲には、
その“光と影のあいだ”の感覚がはっきりと刻まれています。


「自由だが、孤独である」という主題

この交響曲の冒頭に現れる3つの音は、
ブラームス自身のモットーを表していると言われます。

F–A–F
Frei aber froh
(自由だが、幸福である)

しかしこの音楽は、
単純な幸福を歌ってはいません。

そこにあるのは、
自由であることの代償としての
孤独と静けさです。


4つの楽章

第1楽章

力強く始まるが、すぐに柔らかさが混じる。
英雄的というより、
感情が揺れ動く人間の声に近い。


第2楽章

穏やかで、室内楽のような親密さ。
ブラームスの音楽の中でも、
とくに“優しい時間”が流れる部分。


第3楽章

この交響曲で最も有名な楽章。
郷愁と孤独が溶け合った旋律は、
映画やドラマでも何度も使われてきました。


第4楽章

激しく始まるが、
最後は静かに、まるで夕暮れのように終わる。

ブラームスの交響曲の中で、
これほど穏やかに終わる作品は他にありません。


なぜ第3番は特別なのか

第1番のような闘争も、
第4番のような厳しさも、
ここにはない。

あるのは:

成熟した人間が、
世界と静かに和解している音楽

それが、この交響曲です。