ラーガとターラが織りなす、時間と瞑想の音楽。
北インド古典から南インドのカルナティック、映画音楽まで、
インドの深く美しい音世界を、実体験と資料を交えて紹介します。
インド音楽に初めて深く触れたとき、
正直に言えば、すぐには「わかった」とは言えなかった。
旋律は長く、即興は終わらない。
拍子は見えにくく、盛り上がりも西洋音楽のようには来ない。
けれど、ある朝のことだった。
まだ街が目覚める前、
ゆっくりと流れるラーガを流していると、
その音楽が「音」ではなく
時間そのものをデザインしていることに気づいた。
■ ラーガは感情ではなく「時間」を表現する
インド古典音楽のラーガは、
単なる音階ではない。
- 朝に演奏されるラーガ
- 夕暮れのラーガ
- 雨季のラーガ
それぞれに意味と空気がある。
これは、
音楽が人の感情を操作するためのものではなく、
人が自然の流れに身を委ねるための装置であるという思想だ。
あなたが「夜明け」を大切にしてきた理由と、
インド音楽はどこかでつながっている。
■ 南インドの音楽——理性と精神の極北
南インドのカルナティック音楽は、
より厳格で、より研ぎ澄まされている。
L.シャンカルのヴァイオリン、
U.シュリニバースのマンドリン。
そこには、
歌っていないのに“歌”としか言いようのない旋律がある。
アリア、カンタービレ。
言葉を持たない声。
■ 映画音楽と宗教音楽が共存する国
インドでは、
寺院の音楽と映画音楽が同じ地平に存在している。
A.R.ラフマーンの音楽が
世界を驚かせたのも偶然ではない。
インドでは、
精神性と大衆性が対立しない。
それが、この国の音楽の懐の深さだ。






