World Music|世界の音楽とことばのアーカイブ

アフリカ、インド、中東、南米、東欧、バリ、ジャズ、民謡、スーフィー、クラシックまで。 蒐集・試聴・旅・記録を通じて世界の音楽文化を紹介する日本語のワールドミュージック・メディア。

Monday, 19/1/2026 | 8:45 UTC+9

ガーナのパームワイン・ミュージックと Koo Nimo

〜アフリカの港町で生まれた、ギターと歌の静かな革命〜

西アフリカ・ガーナには、**「パームワイン・ミュージック(Palm Wine Music)」**と呼ばれる、独特の音楽文化があります。

その名前は、ヤシの木から採れる発酵酒「パームワイン」に由来します。
1930年代以降、港町や酒場で、庶民がこの酒を飲みながら楽しんだのが、この音楽でした。

大音量のダンス音楽でもなく、宗教音楽でもない。
ギターと歌を中心に、静かに繰り返されるリズムとメロディ。
それは、西アフリカの人々の日常と感情に寄り添う、極めて“生活に近い音楽”でした。


Koo Nimo(コー・ニモ/クー・ニモ)という存在

このパームワイン・ミュージックを代表する音楽家が
**Koo Nimo(コー・ニモ/現地発音ではクー・ニモ)**です。

彼は単なる酒場のギタリストではありません。
ガーナのクマシ大学で化学を学び、イギリス留学も経験した知識人でありながら、
自国の伝統音楽をギターで表現する道を選びました。

ジャズやクラシックを聴きながらも、
「自分はアフリカのギタリストでありたい」と語り、
トゥイ語の歌と伝統的な旋律を、
西洋ギターで再構築することに人生を捧げた人物です。


「Osabarima」— パームワイン・ミュージックの結晶

このCD
『The Real Palm Wine Music – Osabarima』
は、Koo Nimoの音楽世界を最も純粋な形で記録した作品のひとつです。

そこにあるのは:

  • シンプルなアコースティック・ギター

  • 語りかけるような歌

  • コンガや小さなパーカッションの反復

派手さはありません。
しかし聴いていると、次第に時間の感覚がほどけていく。
音楽が“環境”になる瞬間が訪れます。

これは「鑑賞する音楽」ではなく、
**「そこに在る音楽」**なのです。


なぜ今、パームワイン・ミュージックなのか

現代のアフリカ音楽は、ハイライフ、アフロビート、ヒップホップへと進化しました。
しかし、Koo Nimoの音楽には、
**それ以前の“アフリカがまだ世界と急激に混ざる前の音”**が残っています。

それはノスタルジーではなく、
文化の深層に触れる体験です。

ワールドミュージックとは、
「珍しい音楽」ではなく、
**「遠い場所の人々の人生を、音で感じること」**なのだと、
この1枚は静かに教えてくれます。

ハイライフ・ルーツ・リヴァイヴァル/コー・ニモ 

About

世界の音楽との「出会い」(自己紹介 noteへのリンク) 大阪のレコード店で出会ったインドネシアのダンスミュージック ダンドゥット(DANGDUT)の女王、エルフィ・スカエシ(Elvy Sukaesih)と言ってもまずは誰もわからないだろう。インドネシアの美空ひばりと言ってもピンとこないな、きっと。それに正しくもない。インドネシアは多様な民族の集まる国だから国民を代表する歌手はいない。ひとつの大衆音楽の女王である。 大袈裟だが、このレコードと出会わなかったら、自分の人生は変わっていただろうと思う。ただ、それはわからない。でも、出会うべくして出会ったのだろう。 https://note.com/jirorhythm/n/n936acb145d0e

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