World Music|世界の音楽とことばのアーカイブ

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Monday, 19/1/2026 | 11:16 UTC+9

パコ・デ・ルシア『霊感』──ギターが語りかけてくる朝

レコードをターンテーブルに置き、針を落とすと、静けさを裂くように一音が響く。その瞬間から、パコ・デ・ルシアの世界に引き込まれる。
アルバムのタイトルは『Recital de Guitarra de Paco de Lucía(霊感)』。まさに霊感──スピリットとしか言いようのない何かが、音に宿っている。

1960年代末、若き日のパコが爪弾くフラメンコギター。技巧の華やかさもさることながら、このレコードには「生きている音」がある。爪弾くたび、空気が震え、胸の奥が反応する。まるで彼の指先が、自分の心の琴線を直接かき鳴らしているような錯覚に陥る。

聴いていると、不思議と元気が湧いてくる。
悲しみや倦怠を寄せつけない、凛とした明るさがある。
情熱的でありながら、決して押しつけがましくない。
スペイン南部の太陽の下、白い壁の街に吹く乾いた風のように、心をふっと軽くしてくれる。

特に印象に残るのは、「El Tempul」や「Llanto a Cádiz」。
どこか哀しみを帯びながらも、流れるような旋律が、前へ前へと進んでいく。
停滞せず、うずくまらず、ギターは語り続ける──生きることの尊さ、音楽の自由を。

静かに自分を鼓舞してくれる、そんなレコードだ。
朝の光の中で聴くと、今日をちゃんと始めようという気持ちになれる。
音楽には、こんなふうに、人の背中をそっと押す力があるんだと、改めて感じた。

About

世界の音楽との「出会い」(自己紹介 noteへのリンク) 大阪のレコード店で出会ったインドネシアのダンスミュージック ダンドゥット(DANGDUT)の女王、エルフィ・スカエシ(Elvy Sukaesih)と言ってもまずは誰もわからないだろう。インドネシアの美空ひばりと言ってもピンとこないな、きっと。それに正しくもない。インドネシアは多様な民族の集まる国だから国民を代表する歌手はいない。ひとつの大衆音楽の女王である。 大袈裟だが、このレコードと出会わなかったら、自分の人生は変わっていただろうと思う。ただ、それはわからない。でも、出会うべくして出会ったのだろう。 https://note.com/jirorhythm/n/n936acb145d0e

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