Wednesday, 9/7/2025 | 9:22 UTC+9
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月の光と、始まりの音楽

Ivan Moravec Plays Debussy – Clair de Lune

音楽は、ジャンルを超えて私たちの心に寄り添ってくれる。
クラシックのピアノ作品もまた、その一つ。

ある静かな朝、まだ街が動き出す前。
私はこの一枚のレコードをターンテーブルに置いた。
イヴァン・モラヴェッツが弾くドビュッシー
『月の光(Clair de Lune)』を中心にした、静かで深い音の世界だ。


朝に聴くドビュッシーは、夜とは違う顔を見せてくれる。
音が空間にそっと広がっていく。
淡い光が部屋の隅々に届くように、
ピアノの響きが心の奥にやさしく触れる。

このアルバムには、幻想的でありながら温かみのある楽曲が並ぶ。
「沈める寺」「アナカプリの丘」「音と香りは夕暮れの大気に漂う」……
どの曲にも、ドビュッシーならではの曖昧さの中にある真実が宿っている。


私たちはつい、「朝に合う音楽」と聞くと明るく元気なものを想像してしまう。
けれど、そんな一日の始まりもある。
少し立ち止まりたい朝。
何かを見つめ直したい朝。
静かに心を整えたい朝。

そんなとき、モラヴェッツのドビュッシーは、
何も押しつけず、ただ静かに寄り添ってくれる。
まるで「今日を始める準備はできている?」と、
問いかけるように。


音楽はジャンルではなく、「時間と気持ち」に寄り添うもの。
このドビュッシーのアルバムは、
そんな音楽の本質を思い出させてくれる。

朝のひとときにそっと流れる音。
音楽のある暮らし。
その豊かさは、いつだって新鮮だ。

モラヴェッツのドビュッシーを聴いていて、ふと思い出した音がある。
西アフリカ、マリの伝統弦楽器**「コラ」**の音色だ。

どちらも「静けさの中に流れる、祈りのような旋律」。
ただ静かなだけでなく、聴く者の心に**“過去と未来”を同時に感じさせる音**。

クラシックとアフリカ音楽。遠く離れていても、
どこか共鳴し合う瞬間があるのが、音楽の不思議だと思う。

About

世界の音楽との「出会い」(自己紹介 noteへのリンク) 大阪のレコード店で出会ったインドネシアのダンスミュージック ダンドゥット(DANGDUT)の女王、エルフィ・スカエシ(Elvy Sukaesih)と言ってもまずは誰もわからないだろう。インドネシアの美空ひばりと言ってもピンとこないな、きっと。それに正しくもない。インドネシアは多様な民族の集まる国だから国民を代表する歌手はいない。ひとつの大衆音楽の女王である。 大袈裟だが、このレコードと出会わなかったら、自分の人生は変わっていただろうと思う。ただ、それはわからない。でも、出会うべくして出会ったのだろう。 https://note.com/jirorhythm/n/n936acb145d0e

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